ワークショップおよびプロジェクション: きっと、会うたことのない、誰かのため(に)
シーズン4
シーズン4においても、これまで続く”北陸に関する作品に描かれた女性たちの生き方や夢から、未来のまちづくりへのヒントを得る”というテーマは継続された。今回の新たな方法論として、公共的な場所での春・秋2回のランドスケープ・プロジェクションによるプレゼンテーション・イベントがプログラムに組み入れられた。美しい景観でも知られる富山県呉西地区の散居村にある民家を舞台に、田植え前の水を張った水田の真ん中に、幻想的な映像が浮かび上がるプロジェクション・マッピング・イベントとなった。CATにとっても、表現作品に対するより広い直接的反応を受け取る良い機会となり、周辺の方々に加え、偶然その場に居合わせた旅の途中という方からは「良い土産をもらった」との感想をいただいた
3日間、集中的に開催したワークショップは期間中、過去の作品展示を同時併設しつつ、台風19号の直撃を受けながらも、会場の高岡市立博物館で学芸員の方のご協力をいただき、滞りなく開催することができた。合間には、地元新聞社の取材や、地元でまちづくりのNPO活動をする人、南砺市で自然農業を実践する人たちから興味深いお話を聞くことができた。
悪天候にもかかわらず、ワークショップ会場には地元新聞の掲載記事による効果により、様々な年代の方々が訪問してくれ、「ずっと続けて欲しい」「もっと広く知られるべきだ」など色々な意見をいただいた。ワークショップにはCATの富山メンバーや、地元の方々だけでなく、呉東地区から新聞記事を見て参加してくれた人、石川県からは大学生など、広い地域から参加してくれた。対象作品についてのディスカションで特に話題になった作品は、高岡市が舞台とされるアニメ映画『君の膵臓が食べたい』(2018)と、富山県出身の作家・山内マリコ原作小説の映画化『ここは退屈迎えに来て』(2018)の最近の2作品で、特に後者は、たんなる青春懐古映画としてよりも、むしろ、(北陸だけでない)地方都市計画や経済の現在のあり方とそこで苦悩する女性たちの姿を浮き彫りにした社会派作品的側面に関する話となった。
また、造形のヒントに、この地に点在する優れた建築もこれまで継続的に見学している。今回は、金沢市ゆかりの建築家・谷口吉郎・吉生氏の作品を展示する谷口吉郎・吉生記念金沢建築館や、安藤忠雄氏設計の西田幾多郎哲学館(かほく市)、長谷川逸子氏の大島絵本館(射水市)、そして、ニューヨーク市の911ミュジーアム(正式名称:ナショナル・セプテンバー11メモリアル&ミュージアム)の設計でも知られる建築家・ダニエル・リベスキンド作の巨大彫刻、アウトサイドラインなどを見学した。
ワークショップでは、コンセプチュアル・マッピングを始めとする共同作業も並行して行われたが、この「女性の生き方から学ぶこと」には、まだまだ新鮮な発見が多く、更なる表現の引き出しが必要と感じた。より丁寧に感じ取り、深めて行き、それが何故この地を舞台で描かれるのか、という理由についてさらに掘り下げてゆきたい。
今シーズンも、地元高岡市を拠点に、富山県の女性の地位向上や環境問題に取組むNPO法人 Nプロジェクト ひと・みち・まちの皆さんから、宣伝から参加まで随所でのサポートを頂いたことに、また芸術文化的のフレームを柔軟に理解し受け入れて下さった高岡市立博物館、また、伝統民家をプロジェクション・マッピングのために提供していただいた、(屋号)きょんさの中井ご夫妻にも感謝したい。
*ワークショップのタイトル「きっと、会うたことのない、誰かのため(に)」は、高岡が舞台となった木崎さと子の芥川賞受賞作『青桐』(1985年)の台詞からきている。
協力:
NPO法人 Nプロジェクト ひと・みち・まち/
後援:
北日本新聞社/富山県/富山県文化振興財団/高岡市/高岡市教育委員会
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