リサーチ・トリップ: 修学院離宮(京都)

「映画的庭園建築」を訪ねメンバー一同が京都へ赴いた。英国式風景庭園の概念と同様、様々なシーンを配し、それを体験者が巡ることで映画的な体験をする、その最も美しく優れた例としての修学院離宮、また修学院に規模では劣るが庭園内に配置された風景オブジェとしての建築物のデザイン・コンポジションの美しさがかつてドイツ人建築家ブルーノ・タウトを始めとする多くの海外建築家たちも絶賛した桂離宮の2カ所を訪れ、その映画的な特性の実感および検証の試み。

修学院離宮は広大な箱庭ともいえる一種の空間と捉えれば、およそ(宮内庁により決められた)1時間あまりのガイドツアーという映像プログラムにおいて、体験者が園内を巡回し動くことで、視点と対象オブジェクトが刻々と変化し、静止画が動画となって動き出すメカニズムが働いていると言えよう。これは、ストウヘッド(写真下左)などの英国式風景庭園と同じ発想と考えられる。敢て相違点を挙げるなら、英国庭園の方が、(内部に入ることのできない)フォリーなどが建築としてよりむしろランドスケープ・オブジェとして演劇の書割り的にデザインされているのに対し、修学院の東屋、茶室、物見台などは、それぞれが建築として機能している点と言えよう。(フォリーと庭園の関連性は、ベルナール・チュミ設計のパリ・ラビレット公園にむしろ近いかもしれない。)つまり、空間内部からの視点もその映像プログラムにバリエーションの一つとして加わっているということだ。そして、体験者個人が、その場へ行った時の個人的な記憶が園内それぞれの場に埋め込まれ更なる物語性が賦与される。