シネマティック・カフェ: 物語と建築 3 フランス地方都市の再生〜ブルターニュ地方〜

千田勝氏の語る「物語と建築」についての第3回。今回は氏の暮らすブルターニュ地方が舞台となった映画『夏物語Conte d’été』(1996エリック・ロメール監督)を冒頭で引用した後、「物語は著者から読者に書物を通して物語を伝達するように、建築も建物(空間)を通して訪問者にメッセージを伝えることができるのでは」という問題提起がなされ、言葉で語られる建築物や空間が、人の心理に与える影響や物語の舞台となった場所など訪れ思いを馳せる聖地巡礼、グーグルマップでの旅の思い出の検索、SNSでつぶやかれた個人の物語などが、空間や場所の認識に関わり、新しい街の物語が作られていく現代の社会現象に話しが及んだ。

また、偶然の出会いに身を任せ、さすらい歩きながら個人の経験や出来事から街を解読することで、既存の状況を読み替え、新たな物語を生み出す一種の再生のための手法「デリーブ」についても解説してくれた。ちなみに、この手法はフランスの70年代の芸術的政治活動「アンテルナシオナル・シチュアシオニスト」を源とするものだが、90年代の英国建築大学AAスクールでは建築空間の発想として引用されたことがあるという。リラックスした雰囲気の中、示唆に富むトークと、続く創造的なディスカッションの詰まった2時間だった。

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