ワークショップおよび展示: きっと、会うたことのない、誰かのため(に) シーズン3

シーズン2の”北陸の女性たちの生き方や夢”の抽出と表現から、さらにそれを進化発展させるため、当地で市民の関心の高いサブジェクトでもある、”まちづくりへのヒントを探る”ことを試みたワークショップは、事前に前年2017年秋から翌年春まで数回のリサーチと説明会などの準備を重ね2018年5月に3日間のスケジュールで開催。そしておよそ5ヶ月の制作準備期間を経て1週間の展示が10月に開催された。

描かれた女性たちの生き方や夢からまちづくりを見出す、という一見難しそうなテーマだが、実際、ここ最近のメディアでは、まちづくりや現代地方都市に生きる人々の生き様がテーマの作品は多い(TVアニメ『サクラクエスト』(2017)や富山出身の山内マリコの小説『メガネと放蕩娘』(2017)等)。しかし、たとえ過去の作品でも、保守的な現状や既成概念に疑問を抱いたり、覆したり、古き良きものを再生したり、物事を正の方向へ向けようとする人々の姿が描かれた作品も(津村節子や本谷有希子や森山啓、水上勉の小説や映画等)北陸には数多く存在していた。私たちにはこれらを建築や都市計画の魂や動機の部分や根本的発想に結びつけ未来へ生かそうとする意識も背後にある。また、ここで得た多くの貴重なインスピレーションはいわゆるマインド・マップとして図式化も試みられた。(下段右)

3日間のワークショップでは、参加者それぞれが思い思いの方法で作品から感じたこと、伝えたいと思うことを表現するという方法は前年とは変わらず、スタッフから出されるヒントを自分に取り入れることに取り組む人や、自分で表現することの喜びに覚醒した人もいた。地域での活動、小説や映画、地元美術館や文学館での展示の感想を述べ合ったり、表現経験やスキルのある人、ない人、異分野の人々が集い同じテーマを共有することができた創造的で充実したひと時だった。そこにはお互いの気付き合いや同じ町に住みながらの新しい出会いもあった。

続く10月の展示は、地元高岡市のアートギャラリーの協賛による企画展として開催された。展示コンセプトは過去3年間の当地での活動の経過報告とそこから得たまちづくりに関する問題提起だ。展示期間中には、会場でミニ・ワークショップや南砺市からお招きした自然農実践者による環境と文学を考える読書会も開催され、当地で活躍する芸術家の皆さんも数多く訪れ有意義な意見交換ができた。更に、一般の方からは「展示を観て幸せな気分になった」とのコメントを戴いた。シーズン3をこのような実り多いかたちで迎えることができたのはひとえに地元の方々のご協力や好奇心それに寛容さによるものだ。とくに地元NPOの方々には様々な提案や意見、激励をいただき、感謝の言葉もない。むしろCAT自体が学ぶこと大で、志半ばのこの活動の今後の糧になるに違いない。

*ワークショップのタイトル「きっと、会うたことのない、誰かのため(に)」は、高岡が舞台となった木崎さと子の芥川賞受賞作『青桐』(1985年)より。

ドローイング(TOP): Masumi Nakashima
その他表現:Tomoko Shoji, Kyoko Sugano, Masao Yonehara, Madoka Nemugaki, Yoshiko Takezawa, Mami Fujimaki, Namio Ohmichi他
プロデュースおよび展示キュレーション: Keiichi Ogata

協賛:
ギャラリーVenere
Special thanks to
Masumi Nemugaki, Seiko Yamashita、Kumiko Ohtsubo、Fumio Isobe, NPO法人 Nプロジェクト ひと・みち・まち、Ryohsuke Kanoh(ゲストハウス・ほんまちの家)、Kenichi and Mieko Nakai(きょんさ), Asako Saeki(Art craft *Life Creation*)、Shigeru Akeno
協力:
日本都市計画家協会
後援:
北日本新聞社/富山県/富山県文化振興財団/高岡市/高岡市教育委員会

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